長島フォーラム21

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国会質疑

2004年4月13日

【会議録】第159回通常国会 衆議院本会議

【議長(河野洋平君)】

長島昭久君。

【長島委員】

私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました、いわゆる有事関連法案などにつきまして、その中核法案である国民保護法案を中心に、関係大臣に質問させていただきます。(拍手)  質問に先立ちまして、イラクで今なお拘束されている三人の日本人の方々が一刻も早く無事に解放されますことを、心からお祈り申し上げたいと思います。(拍手)  事件が起こって以来、解決のために昼夜を問わず尽力されてきた関係各位に深く敬意を表するとともに、政府に対しましては、このような事件が再発しないよう、邦人保護に万全の対応措置を講じられるよう、改めて強く要望したいと思います。(拍手)  この事件に際しまして、私たち民主党は、早い段階から、党派を超えて政府の対応を支援する方針を打ち出してまいりました。それは、この事件がまさしく有事にほかならないと考えたからであります。  したがいまして、事件が解決した暁には、対イラク政策全般について、とりわけ自衛隊のイラク派遣の是非について、改めて徹底的な議論をしていくことを国民の皆様にお誓い申し上げたいと思います。(拍手)  さて、本題に入ります。  私たち民主党は、結党以来、緊急事態の法整備はこれを速やかに進めるべきであるとの立場を貫いてまいりました。有事にあって、国民の生命と財産を守るためとはいえ、超法規的な手段に訴えることは、憲法秩序そのものの破壊につながるからであります。  その際、特に留意すべき憲法上の原則として、基本的人権の尊重とシビリアンコントロールの貫徹を強く求めてまいりました。  その意味で、このたび、与野党の協議機関において、武力攻撃事態のみならず、大災害やテロなども含めた包括的な緊急事態基本法を制定することが合意され、あわせて、民主党が求めてきた緊急対処事態の認定に国会を関与させるシビリアンコントロールの原則を与党側が受け入れたことは大きな前進である、このように評価をしております。  このように、私たちは、有事関連法案の審議に当たり、議論の入り口から反対しようとは考えておりません。国民の生命と財産を守る上で、より実効性の高い危機管理体制を構築するために、引き続き法案審議に対して真っ正面から取り組んでいく決意であることを冒頭に明らかにしておきたいと思います。(拍手)  まず最初に、与野党で合意いたしました基本法づくりの大前提である基本的人権に対する考え方についてお尋ねいたします。  基本的人権の保障は、平時、有事を問わず貫徹されなければなりません。特に、武力攻撃事態などにおける実力部隊の活動は、常に人権侵害に至る可能性と表裏一体であります。その際にも、政府が最大限に尊重すべき基本的人権について、基本法の中に詳細に盛り込んでおく必要があると考えます。  例えば、いかなる事態にあっても、思想、良心、信仰の自由といった内心の自由は絶対不可侵であること、その他の精神的自由権に対する制約も、より重大な人権を守るための必要最小限の範囲にとどめなければならないことなどであります。  その中でも、特に報道の自由は重要であります。さきの大戦下における大本営発表のような苦い経験にかんがみれば、政府案で指定公共機関の一つとされた放送事業者の報道の自由、取材の自由に対する具体的な保障規定は不可欠であります。  この点、昨年民主党が提出した修正案が、放送事業者の「報道の自由、政府を批判する自由等の表現の自由を侵してはならない」と規定し、これを受けて、武力攻撃事態法の成立に際して行われた衆参両院の附帯決議の中で、特に報道・表現の自由への配慮がうたわれたことは周知のとおりであります。  これら基本的人権の尊重について、まず、法務大臣の御所見を賜りたいと思います。その上で、基本法において人権保障規定をさらに詳細なものとする意思がおありかどうか、有事法制担当大臣の御所見を伺います。(拍手)  また、その他の指定公共機関が行う国民保護のための措置についても、各方面から心配の声が聞かれます。  例えば、保護措置に従事する者の安全確保や事故が起きた場合の補償問題、労働組合や赤十字などの関係団体との協議、従事者が業務命令違反をした場合の運用指針の策定、指定公共機関の指定理由、その範囲や効果の明示など、政府案では全くうかがい知ることができません。  政府は、このような国民の懸念に対して、逐一、説明責任を果たし、理解を得なければ、法案に言う、有事における国民の自発的な協力は望むべくもないでしょう。  少なくとも、今挙げた幾つかの懸念について政府がどのようにお考えか、また、国民の理解を得るためにどのような御努力をなされるおつもりか、有事法制担当大臣から明確な御答弁をいただきたいと思います。(拍手)  次に、あるべき危機管理体制づくりに向けた進捗状況について伺います。  民主党は、昨年提出した緊急事態対処・未然防止基本法案におきまして、危機管理庁の設置を提唱いたしました。この民主党提案を受けて、昨年の武力攻撃事態法の附則において、「緊急事態へのより迅速かつ的確な対処に資する組織の在り方について検討を行うものとする。」と明記されたことは周知のとおりであります。  数々の実績を誇るアメリカの危機管理組織FEMAの経験からも明らかなように、緊急事態にあって、省庁横断的な総合調整権限を持った強力な中核組織の存在は不可欠だと思われますが、検討の状況は一体どうなっているのでしょうか。まさか、平時の縦割り行政を前提とした出向職員の寄せ集めで有事にも十分対処できるとお考えではないでしょう。有事法制担当大臣、既に一年が経過しようとしておりますが、危機管理体制づくりの進捗状況について明確にお答えください。(拍手)  長くFEMAの長官を務めたジェームズ・ウィット氏は、最近行った議会証言の中で、計画の策定、訓練や演習、事態対処に当たっての情報収集、情報共有のすべてにわたり、国と地方が一体となって協力していける体制づくりが最も重要だと繰り返し強調しております。  法案によれば、地方レベルにおける有事の際の総合調整は、都道府県及び市町村の対策本部にゆだねられています。しかし、武力攻撃事態が県境をまたいで広域に影響する場合、本来が危機管理官庁ではない都道府県庁や市町村の役場などに、自衛隊、警察、消防など多くの機能、もろもろの機関にわたる迅速的確な総合調整が果たして可能なのでしょうか。具体的な自治体支援体制について、総務大臣及び有事法制担当大臣に説得力ある説明を求めます。  特に、国と地方が一体となって緊急事態に対処する上で不可欠と思われるのが、国の現地対策本部であります。  この点について、初動がおくれて大惨事を招きました阪神・淡路大震災の教訓や反省を踏まえて、法律上の機関として、国が現地対策本部を置くことができるよう、平成七年に災害対策基本法が改正されました。さらに、東海村の臨界事故を契機といたしまして平成十二年に新たに制定された原子力災害対策特別措置法においても、同様の規定が盛り込まれました。  しかしながら、今回提出された政府案には、国が現地対策本部を設置できる規定はどこにも見当たりません。これは一体、いかなる理由なのでしょうか。過去の緊急事態における貴重な教訓や反省が全く生かされていないとすれば、今回の国民保護法案の致命的な欠陥と言わなければなりません。(拍手)  緊急事態における国民の保護に万全を期し、国及び地方の関係機関による対処措置を円滑に行うためには、現地においても国の対策本部を設置し、現地対策本部長に、都道府県をまたいだ広域的な状況判断や関係機関を束ねる迅速な意思決定を可能とする一定の総合調整権限を付与することが極めて有効であり、かつ必要と考えますが、総務大臣並びに有事法制担当大臣の御見解を伺いたいと思います。(拍手)  次に、今回の法案で、いわゆる民間防衛組織の創設を見送った真意について伺います。  今回、政府が承認を求めているジュネーブ諸条約の第一議定書には、第六章に、文民たる住民を敵対行為や災害の危険から保護することなどを任務とする文民保護について詳細な規定が置かれております。  にもかかわらず、政府案においては、国民の保護のための活動を行う組織、条約の規定でいえば文民保護組織を新たに設けることはせずに、住民の自主的な防災組織やボランティア活動に期待をし、これを国や地方自治体が支援するにとどめております。  しかし、地域の自治会や消防団などでは深刻な高齢化が進んでおり、自主防災組織の組織率は、全国平均で約六〇%、しかも、都道府県ごとに見ると、ほぼ一〇〇%に近い自治体から五%に満たない自治体まで千差万別です。このような対処能力のばらつきは、有事において致命的な結果を招くおそれがあります。  にもかかわらず、なぜ、政府として全国規模の国民保護のための組織を設けようとしないのか、総務大臣及び有事法制担当大臣、その理由をお答えください。  また、緊急事態に当たって、混乱することなく円滑に避難の措置などを行うためには、平素から十分な訓練を行っておくことが極めて重要であります。  政府案には、地方自治体による保護措置の実施に対して原則として国費を充てることになっていますが、他方、平時において最も重要である住民の訓練や警報伝達体制の整備などに要する経費、あるいは住民避難のための社会資本整備など、あらかじめ講じておかなければならない各種措置に要する経費については、国庫負担にかかる規定が置かれておりません。  これらの費用は、自治体にとっては相当な負担となることが予想されております。平素における訓練その他の準備措置にかかる経費についても国において相応の負担を行うべきであり、その旨を法律上も明確に規定すべきと考えますが、総務大臣及び有事法制担当大臣の御所見を伺いたいと思います。(拍手)  最後に、有事法制をめぐる本質的な問題について一言申し上げたいと思います。  有事法制の本質は、国民の生命、身体を守るため、一時的にではあれ、時の政府に国民の権利を制約する権限をゆだねることにあります。それには、国民の信頼に足る政府であることが大前提です。  しかし、小泉政権の現状はどうでしょうか。イラクでとうとい命を落とされた二人の外交官をめぐる情報操作の疑惑や、年金法案の審議における総理大臣のあからさまな答弁拒否など、立法府が慎重な審議を行うに当たって不可欠な情報や判断の根拠について、平時においてすら国会や国民への情報提供が十分に行われていません。情報がより錯綜する緊急事態においてをやであります。まさしく、信なくば立たずであります。(拍手)  私たち民主党は、一日も早く政権交代を実現して、国民の皆さんが本当に信頼できる政府をつくり、私たちの手で緊急事態法制の総仕上げをなし遂げる決意であることを表明して、質問を終わりたいと思います。(拍手)

【国務大臣(野沢太三君)】

 報道の自由を初めとした基本的人権の尊重について、さらなる詳細な規定を緊急事態基本法に盛り込む意思があるかどうかとのお尋ねがありました。  法務省は、緊急事態基本法を所管するものではなく、お答えする立場にありませんが、一般論として申し上げれば、憲法が国民に保障する基本的人権は侵すことのできない永久の権利として尊重されるべきものと考えております。  今後、緊急事態対処法について法務省として対応すべき問題につきましては、関係省庁と連携しつつ、必要な対応をしてまいりたいと考えております。(拍手)

【国務大臣(麻生太郎)】

 長島議員から、四問ちょうだいをいたしております。  まず、地方レベルにおける総合調整の支援策についてお尋ねがあっております。  これまでも、大規模災害などに当たりましては、国の防災基本計画と地方の防災計画に基づきまして、国及び地方団体の総合調整というのを行ってきたのは御存じのとおりです。  今回の国民保護につきましても、国の基本方針と地方のつくります国民保護計画などによりまして、国及び地方団体の総合調整というものを図らねばならぬことは当然でありまして、総合調整を図るということが大前提であると思っております。これに基づきまして、国民の保護のためにいろいろ行います措置が、国、地方と一体となって推進されていくものというぐあいに考えております。  次に、緊急事態における現地での迅速な意思決定についてのお尋ねがありました。  武力攻撃事態におきまして、国全体として対処する必要がある、まことにごもっともな御指摘でありまして、内閣に対策本部は当然のこととして設置いたします。地域におきましても、都道府県知事及び市町村長が対策本部長として国民の保護のための措置を実施いたします。  その際、国の対策本部長、内閣総理大臣ということになりますが、住民への警報、避難措置の指示は総務大臣、知事及び市町村に対して一元的かつ迅速に伝達するというのは当然のこととして、これによって、国民の保護のための措置を迅速かつ総合的に決定し、推進する仕組みといたしております。  三番目に、国民保護のための組織についてのお尋ねがありました。  地域におきましては、日ごろから、消防職員や消防団員、また警察官、そのほか地方団体の職員などが、火災、自然災害等重要な事故に当たりましては役割を担っているところでありますけれども、今回提出をいたしました法案におきましても、こういった方たちがジュネーブ条約に規定する文民保護組織の要員として、そして国民の保護のための措置に係る職務を協力しながら一体として行うというものにいたしております。武力攻撃事態におきましても、こうした方たちが住民の避難や誘導、救援に携わることの方が効果的であり、かつ適切であると考えております。  最後に、訓練に係る財政措置についてのお尋ねがありました。  まず、武力攻撃事態等におきます住民避難等に要します費用については、国が負担するということにいたしております。  次に、訓練等平素の準備ももっと重要かもしれませんが、そういった意味で、地方公共団体から、こうした経費につきましても国が負担すべきであるという、財政措置に対する要請がなされておるところであります。  これらを踏まえまして、国としても、支援をする対象の具体化を行いまして、国として責任を果たし得る財政措置を検討いたしてまいりたいと存じます。(拍手)

【国務大臣(井上喜一君)】

 いわゆる基本法についてのお尋ねがございました。  いわゆる基本法につきましては、与党と民主党の間で三党協議会が開催され、緊急事態基本法、仮称でありますが、これを制定することについて合意をされたものと承知いたしております。  政府といたしましては、まずは、今国会に提出をいたしました国民保護法案を初めとする有事関連七法案の成立に万全を期してまいりたいと考えておりまして、緊急事態基本法につきましては、与野党間の御論議を見守りつつ、必要な検討を行ってまいりたいと考えております。  次に、指定公共機関が行う国民の保護のための措置等についてのお尋ねがございました。  安全確保については、法案第二十二条で、国や地方公共団体の指定公共機関に対する安全確保の配慮義務などを規定いたしております。従業者の事故補償については、労働者災害補償により対応されることとなります。  また、各指定公共機関におきましては、国民保護のための措置を円滑に実施するため、平素から幅広い関係者の意見を聞き十分な理解を得ることは大変重要なことと考えております。  また、法案は個々の従業者に対して具体的な行為を求めるものでないため、従業者が業務命令に従わない場合は、それぞれの機関の内部規定等に基づき対応されることとなります。  また、武力攻撃事態等においては、国全体として万全の措置を講ずる必要があることから、民間機関も一定の役割を果たしていただきたく、指定公共機関の制度を設けた次第でございます。具体的な指定の内容は、現段階で定まっておりませんけれども、災害対策基本法の指定公共機関を参考に検討する考えでございます。指定公共機関として指定された法人は、業務計画を作成し、措置を実施する義務が生じます。  法案の整備に当たっては、これまで幅広い関係者の意見を伺いながら進めてきたところでありますが、今後とも、幅広く国民の理解を得られるよう一層努力をしてまいります。  次に、緊急事態対処組織のあり方の検討状況についてのお尋ねがございました。  国及び国民の安全に重大な影響を及ぼすさまざまな緊急事態に急速かつ的確に対処できる体制を構築することは、政府の当然の責務でございます。  国家の緊急事態への対処に当たりましては、関係する省庁の機能を十分に生かしながら、政府全体として総合力を発揮できることが重要であり、これまでも、内閣を中心にさまざまな緊急事態に対する体制を整備強化してきたところでございます。  御指摘の緊急事態対処組織のあり方につきましては、これまで整備してきた既存の組織や法令との関係、効率性などに留意しつつ、十分な検討が必要であり、引き続き検討してまいりたいと考えております。  次に、地方公共団体の広域的対応に関する国の支援についてお尋ねがございました。  災害に関しましては、各地方公共団体が相互応援協定を締結し、広域的対応をとっております。武力攻撃事態等においては、災害時よりもさらに広域にわたる連携や調整が必要となりますことから、国の基本指針において地方公共団体相互の広域的な連携協力に関する事項を定めるとともに、地方公共団体が実施する措置に対して国が必要な支援を行うことといたしております。  こうした取り組みなどを通じて、国民の保護のための措置に関し、国全体として万全の態勢を整備してまいりたいと考えております。  現地における国の対策本部についてのお尋ねでございます。  武力攻撃事態等への対処は、災害対策の場合とは異なり、国による意思決定、総合調整等が基本となること、対処措置を実施すべき地域は特定の地域に限定されず、全国レベルの複数地域となることが想定されます。このため、それぞれの地域に国の現地対策本部を設置し対処するよりも、中央からの一元的な指揮命令系統に基づき対処する方が、国全体として万全の態勢が整備できるものと考えております。  なお、国民保護のための措置の実施に当たって関係機関の総合調整が必要な場合は、都道府県本部長は、対策本部長に対し総合調整を行うよう要請できることとしており、これにより、関係機関の広域調整が図られ、的確かつ迅速な対応が可能となると考えております。  次に、国民保護のための組織の創設についてお尋ねがございました。  国民保護法案におきましては、指定行政機関、地方公共団体、指定公共機関等並びにこれらの委託及び協力の要請を受けた者が国民の保護のための措置を行うことといたしております。  この国民の保護のための措置の実施につきましては、自主防災組織及びボランティア等により行われる自発的な活動に対し必要な支援を行うことによって、これをさらに効果的に実施することができるものと考えておりまして、国民の保護のための新たな組織をつくるということは考えておりません。  最後に、平素におけるこの準備措置に要する費用についてのことでございますが、国民の保護のための措置を円滑に実施するためには、訓練など平素からの準備が重要と考えております。平素における訓練その他の準備措置に要する費用に係る財政措置については、関係省庁と協議をしてまいりたいと考えております。(拍手)